The Room of Naturalist/道しるべ・駿河の山/大無間山塊

大無間山南尾根を風不入


栗代林道から風不入(かぜいらずと読む) 2001年3月2日

    1.概要
 大無間山の南に延び、東に関の沢、西に栗代川を分ける長大な尾根がある。
この中央に、南に向かって飛び立つ大鷲・大無間山の右肩にあたる頂きが風不入(かぜいらず)だ。
崩壊著しい栗代林道を辿り、尾栗峠に登り、主稜線を北上、急峻な尾根を登る。
 林道から日帰りは無理なので、2002年4月27日(土)と28日(日)にかけて山中一泊で登った。
季節は、春、天候には恵まれませんでしたが、アカヤシオが満開の厳しい尾根だった。
踏み跡、目印はあるが、体力と経験が必要なコースです、ハイキング気分では行けない。

標高1,990.3m2万5千分の1地形図井川
    2.山行記 2002年4月27日(土)曇り、霧
アプローチ
 栗代林道に入り、道路が崩壊し大きく高捲く地点の手前に小広くなっているのでここに車を置く。

駐車地点から尾栗峠入り口
 駐車地点から先、林道が崩壊しているので大きく高捲く。
鉄製の梯子を上り、手入れされた階段を上る、頂点から北に風不入が見えるはずだが、雲がかかって見えない。
高捲いてから林道に下り更に奥を目指す、林道は荒れ、土砂が流出しているが、歩行には支障がない。
 旧ゲートの手前、ガレが林道まで迫っている地点で朝食にする、天気がよければ正面に朝日岳、右奥に風不入が望める。

柚葉歩道の手前、左側に大きな岩がある、ここが少し広くなっていて、ワイヤーロープが張ってある。
この先に右側から水が出ている、上に持ち上げる水を補給する。
これを過ぎ暫らく行くと鉄製のゲートがある、左に柚葉歩道が下っている。
 更に荒れた林道行き右に回りこむと、左下に一部屋根の落ち、壊れた作業小屋が見える。
このあたりの林道は、苔に覆われて落ち着いている。(振り返って見る。)

道の右側にも小屋があり、その手前にオグリ歩道の標識がぶら下がっている。

右上を見ると緑の苔に覆われた岩が押し出し、空沢にようになっている。

尾栗峠入り口から尾栗峠
 オグリ歩道の標識から山道に入る、最近人が通った形跡はなく、足元の岩が苔に覆われている。
出来るだけ苔を踏みつけないように歩くが無理。
径は、最初、苔に覆われた岩の間を縫って行く、次第に杉の人工林になる。
 峠道は、大体この空沢に絡んでジグザグを切って登り易い。
踏み跡は薄いが問題なく辿ることが出来る。
一時、左側に崩壊が迫るがそれを避け登って行く。
 次第に若木の天然林になり、かなり長く右に斜上する、左上が透けてきて峠が近づく。
峠は、カラマツ混じりの若木の天然林で、東、尾盛側は、桧の人工林となっている。

峠に標識があり、尾盛側にも人工林の中を道が延びている。
 峠から南下すれば1,280.1mのピークを経由して栗代山(1,293.7m)に至る。
北上する径が今回辿る風イラズを経由して、大無間山に連なる長大な尾根だ。

尾栗峠から1,351mの標高点
 一休みして、荷物を整え、緩やかな歩き易い稜線を北上する。
周りは若木の天然林、足元には、笹が出てくるが薄く、低い。右側は桧の人工林。
笹は、周りの木が大きくなって後退したようだ。
 笹が濃くなると傾斜が急となり、1,351m手前の壁を登る、厳しい直登で、最初の関門だ。
この急な稜線を登るとやや稜線から左にはずれ、1,320mのピークは避けて二重山稜気味の尾根に登りつく。
笹を抜けると上りやすい尾根になり、足元には真っ白なコイワカガミが咲き乱れる1,351mのピ−クになる。
ヤシオの木が見られるが咲いていなく、シロヤシオと思われる。
 周りは、霧に包まれ真っ白、北に微かに双耳峰が望める、1,612mと1,621mのピークか。
(北に見える双耳峰は、実は、ピークは2つでなく、3つであった。)
兎に角、1,621mのピーク辺りまでは行きたいので、先を目指す。

1,351m標高点から1,612m標高点(テント場)
 1,531m標高点からは、少し下る、このあたりは、厳しいアップダウンがなく、笹も薄く気が抜ける。
鞍部は、細くなっていて気をつけたい、左右の谷は穏やかで少し下がると水が得られるかもしれない。
 ここを過ぎるとまた、笹の中厳しいのぼりとなる、笹を掴んで体を引き上げる。
この登りを繰り返すと一度左側が切れ落ちた地点を通過する、右側の杉の人工林に逃げる。
この辺りからアカヤシオがぽつぽつと見え、花びらが径に散っている。
 厳しいのぼりを抜けると緩やかになり、唐松、馬酔木が目立つ1,580mのピークになる。
頂上の北端にアカヤシオの若木が花を着け迎えてくれる。

この頂上を一旦下り、若木の天然林を登り返すと1,612mのピークになる。
細い密林状の頂きで頂上の一角だけテント一張り分のスペースがある。
左に折れ、密林を抜けると、疎林になる、その一角にテントのスペースを確保できる。
 先のテント適地を探しに荷物を置き、偵察に出る。
疎林の先から笹が出る、丈は短く次第に左前方が開け鞍部になると朝日岳方面が見える。
1,621mへの登りになると笹が密生してくる、前方がトンネルになっている。
天候の影響で、霧がまといつき、笹がしっとりと濡れている、これを行くとびっしょりに濡れそうだ。
濡れるのを嫌って元に戻り、テントを設営、地面が落ち葉で埋まり快適なねぐらになる。
 夕食まで時間があるので、昼寝とする。
と、3時頃人声が聞こえ5人のパーティが登ってきた。
これから先、風不入、大無間山を越え井川の田代に下るとのこと。
今日は出来るだけ大無間山に近づきたいとのことで先に向かっていった。
今回の山行で出会った唯一のパーティだった。
こんなところは、本当の物好きだけだから我々だけかと思っていたので驚きだった。

    2.山行記 2002年4月28日(日) 曇り、霧
1,612mから最低鞍部
 相変わらず天候がはっきりしないので、明るくなってから行動する。
微かに北のほうが明るくなり木の間を透かして風不入が見える。
風不入まで最短で3時間、時間がかかれば4時間、昼には、ここに戻ると、時間をはかり出発する。
 1,621m手前の笹は乾いている、笹のトンネルを抜けると背丈の低い潅木となり、抜けると左前方に朝日岳が見える。
1,621mの頂上直下にテント1つ分の空き地があり、テント設営の特等席だった。
両側に馬酔木を配し、窓を開けると朝日に輝く朝日岳が真正面というところだった、残念。
ここに腰を下ろすと、正面に朝日岳、右奥に黒法師岳、丸盆、鎌崩、不動岳までが視界に入る。
眼下には、荒れた栗代林道が山腹を削って延びている。

右手に、潅木にアカヤシオの混じる尾根を従えて、これから登る風不入本峰が一度だけ顔を出した。

結局今回、天候のこともあり、展望が得られたのはここだけだった。(帰りは霧の中。)
 1,621mを過ぎると下りになり、アカヤシオが点々と目立つようになる。
丁度満開で、足元には濃い桃色の五弁の花びらが散り始めた。
尾根は細く岩稜となり最低鞍部に下る。
鞍部は、幅30から50センチ、長さ2メートルくらいの岩のブリッジとなっているが高度がないので安心して行ける。
鞍部から左手の沢の源頭は、苔に覆われた岩が多く転がり、水分が多く少し下まで下ると水が得られそうな所だ。

最低鞍部から風不入
 ここからの登りが今回のハイライト、無理をしないでユックリと登ろう。
少し登り返し、アカヤシオの花を眺めながらの休憩とする。
山深い山中にひっそりと咲くアカヤシオの群落、望外の御褒美に感謝。
アカヤシオは、この登り、1,720mまでの間に多く、花を愛でながらの登りとなる。

 傾斜の急な細い岩稜の登りが続く、尾根には、木が生え、その根が確りと守ってくれている。
木の根に掴まり、足と手を使って体を引き上げての登りで、荷物が多いと苦労しそうだ。
先行者があり、所々に目印もあるのルートは明確に付いている。
 一度中間の1,720mの段に出る、傾斜が緩み一息つける。
更に急傾斜を登る、一度緩んで頂上直下の登りとなる。
 正面に大きな岩が径を塞いでいる、ここは、左に迂回して乗り越える。
岩、地面に水分が多く、濡れている、が、危険というほどでもない。
この岩を乗り越えると傾斜が緩み、シラビソの林になる、頂上が近いと思わせる。
が、油断は出来ない、登ったその先にまだピークがあったりして。
 しかし、風不入は素直だった、そのまま、半ば埋もれた三等三角点のある頂上に着いた。

頂上は広く、テントが充分に張れる、標識が数枚立ち木にぶら下がっている。
予想よりも時間がかからず上りきった。大休止。

風不入頂上付近の偵察
 予定よりも早く着いたので偵察に行く。
地図によると、北は、大無間山、左には、栗代川へ明確な尾根が延びている、右には、少し先で関の沢下る尾根がある。
 まず、やや右に、北上する、緩やかな下りで左側の緩斜面は、シラビソの樹林帯で少しだけ雪が残っている。
倒木は苔に覆われ安定しているようだ。
径は明瞭で歩き易い、傾斜が出てきて下るようになるので、ここで引き返す。
戻り径、左手(東)に明確な尾根が派生し、関の沢に落ち込んでいる、踏み跡はない。
 右手(西)は広い斜面で、栗代川へ派生する尾根は明確でない、少し下るが踏み跡は見られなかった。
正面、栗代川へ派生する尾根と主稜線の間は広がり、下は、ガレになっていると思われる。
こちらに入り込まないように注意が必要だ。
頂上に戻る、シラビソに囲まれ静かだが、展望はない。

風不入から戻る
 下山は、大無間山からきた場合、少し左側に入る、正面に行くと頂上直下の壁に入り込む。
目印、踏み跡に注意しルートを選定すればよい。
 下りに入ると霧が濃くなり視界が利かなくなる。
踏み跡、目印はあるのだが尾根が複雑に曲がり、大きな岩を迂回するので時々左右に振られる。
慎重に下ってゆく、最低鞍部辺りは、真下に見える。この辺りで霧の下に出た。
1,720mの段から下、右側にはアカヤシオが多く、ミツバツツジも咲いている、登りよりも良く目に付く。
1,621mのピークからは、遠望は利かなく、今回視界が晴れたのは午前のほんの一時だった。
 ベースキャンプ地でコーヒーを飲み、テントを撤収して1,612mのピークを越え下りにかかる。
水は、各自2,000ccプラス飲み水750ccだったが、この時点で一人当たり750ccが残っている。
陽射しもなく思ったほど使わなかった。
後は、忠実に往路を戻る、尾栗峠まで来ると一安心、林道まで峠道を下る、入口が判然としないが空き缶が転がっている。
 荒れた林道を足早に車に戻る。帰りは接阻峡温泉で疲れを癒し、上長尾でお蕎麦を食べて仕上げとなる。

    3.参考タイム
2002年4月27日(土)
焼津=藤枝=島田=千頭=栗代林道(7:10)-(朝食15分)-尾栗峠入り口(8:45)--尾栗峠(9:40-9:50)--1,351m標高点(11:00)
--1,612m手前の段(11:45)--1,612m手前のピーク(12:10)--1612m・ベースキャンプ(12:40)(泊)以後偵察

2002年4月28日(日)
1612m・ベースキャンプ(6:45)--1,621m(7:00)--最低鞍部(7:20)--1,720m手前(7:45)--1,720m(8:10)--中の段(8:45)--風不入(9:15-10:10)
--1,720m(10:55)--最低鞍部(11:35)--1,621m(12:00-12:10)--1,612mベース(12:30-13:05)--1,351m(14:10)--
尾栗峠(14:40)--林道(15:10-15:20)--柚葉ゲート(15:58)--車(16:40)

大無間山塊 道しるべ・駿河の山 The Room of Naturalist Top

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