The Room of Naturalist/道しるべ・駿河の山/安倍東山稜

十枚山


下十枚山と十枚山(大光山から)

    1.概要
 安倍東山稜でも屈指の展望台、東に富士山、北には北岳までの南アルプス、西には深南部と360度の眺望が得られる。
この好展望台と、その北にあるこれも1,2を争う大光山西峰を結んで、東峰を経由して元に戻る扇形のコースを歩く。
この扇形の底には、安倍川支流屈指の関の沢が流れる。

 関の沢は、険しく過去に何回もの遭難を引き起こしている、間違っても入り込まないようにしたい。
このコースの途中にある刈安峠は、峠の東西の崩壊が激しく通過出来ない、これも注意したい。
草木分岐から一本杉山分岐までコース状態は非常に悪くなっている。
途中2箇所トラバースルートが崩壊により抜けている。
上から見て1つは短いが、2つ目は、大きく広い、が、ロープが張られている。
更にその下、尾根一部、左側が、ガレにより侵食され径が飛んでいる。
今回は、右、笹の中を強引に突破した。
また、東峰から関の沢への下りは、下部で径を失って強引に降りた。
 これらを総合すると、車2台で来て、1台は、中の段。もう1台を草木に置いて回遊するのが最善だ。
特に、草木分岐から一本杉山分岐までは、現在廃道に近い、初心者が気楽に通れる径ではない。

標高1,726m地形図(1/25,000)梅ヶ島/南部/湯の森/篠井山

    2.山行記 2001年11月23日(金) 天候・快晴
アプローチ
 6時前の出発で、藤枝バイパスの無料時間に抜ける。
バイパス、安倍街道とスムースで六郎木でトイレ休憩、ハイキングの案内板と立派なトイレがある。
橋を渡り関の沢の集落を抜け、関の沢が分岐する橋の袂に車を置く。

関の沢上流、一本杉山か

関の沢分岐から中の段
 車を関の沢の分岐に置いて歩き始める、少し上に道路が広くなっている、ここに置くのが良いが今日は回遊してくるので下に置いた。
舗装された林道を行くと最初の民家になり、道路の右カーブに十枚山への標識がありショートカットできる。
山道を抜けてもう一度林道に出る、最後の茅葺の民家の脇を過ぎて行く。


中の段から見る安倍川の対岸、二王山

中の段から3本目の沢
 未舗装になり林道に立ち入り、駐車禁止の看板がありその脇を通り山道に入る。
杉林で始め左側は、伐採されている、が、次第に林の中、ジグザグに登るようになる。
右手に山の神を祭ったところがある、少し傾斜が緩くなり一息つける。
更に杉林を上って行くと直登コースとの分岐に来る、標識があり左直登コース、右は、十枚峠経由の径となる。
 右のコースのほうが変化があって楽しい、暫らく行くと右側が切れ明るくなる。
これを過ぎ、杉の林を急登してゆく、また明るい雑木林の中水音が近くなり1本目の沢に来る。
上部には、山葵田の跡らしい石垣が築かれている。


雑木の中の穏やかな径

一度杉林に入り緩やかな雑木になって2本目の沢、同様にして3本目の沢、こちらのほうが水量が多く大きな石、淵が見られる。


3本目の沢

水場は、これが最後、これより上にはない、この後ののぼりに備えて休憩。

3本目の沢から十枚峠
 沢を後にすると最初は、雑木の続いて杉林の急登がある。
暫らく頑張ると笹が出てきて右にトラバースして上がって行く、前方には下十枚山の姿がある。
よく手入れされた笹の径を上がると前方が切れ、木々の間に富士山が覗く十枚峠に登りつく。
後を振り返ると西側が開け、特徴ある七つ峰が見える。

十枚峠から十枚山
 峠からは明るい尾根で、右手には、林を透かして富士の姿が大きい。


富士川の上に浮かぶ

林の切れ目からは、眼下に富士川が流れ富士が悠然と浮かんでいる、北には遠く北岳が見える。
最後の一登りで明るく開けた十枚山の頂上になる。
既に数組のパーティが休憩している。
 頂上からの展望は東山稜でも随一だ。雰囲気は、大光山西峰、見える山の数では十枚山が上だ。
北側の一部が雑木で隠されている。
南アルプス南部は一望で、聖岳の吊り尾根が目立つ、その右に頂上に雪の光る赤石、戻って聖岳の横に上河内岳。


遠く聖岳

更に左へ、茶臼岳、光岳、少し手前に大無間山の大きな塊、そして安倍川の源流の山、八紘嶺、大谷崩れの頭、山伏。
見事な三角形の黒法師岳、流麗な裾を引く三角、前黒法師岳、左に少し霞んで七つ峰、その手前に二王山。
 振り返れば南に大きく下十枚山。その左に篠井山が見えたかな。


下十枚山

写真を撮り、軽く腹ごしらえをして先を目指す。


十枚山からの富士山

十枚山から刈安峠
 十枚山からは急激に下る、先行者は無く、径には、霜が残っている。
時に急激になりながら明るい雑木林の中を下ってゆく。
小さなコブとがあるが全体的には下りが続く、右山梨県側が大きく崩れてくる。
危険な場所にはロープとかがある、あまりガレの端には近づかないように注意して行く。
峠の手前で少し登る、と、傾斜が緩やかになり尾根が少し広がって石のお地蔵さんが祭られている刈安峠に着く。


刈安峠、寂しげなお地蔵さん

 十枚山からここまで1時間以上かかる、意外と長い。
右山梨側に踏み跡は不明瞭、左東峰方面は、ロープが張られ立ち入り禁止。
峠から下り、右に山裾を回りこんだ先のガレが発達し、通行不能になっている。
ここで、大光山の登りに備えて少し長めの休憩をとる。

刈安峠から大光山
 峠からは、明るい雑木林を急登し、一度緩くなりまた大きく登る、一度ピ−クに出て一旦下る。
十枚山からこの辺り、笹の中にブナの若木が大きくなり笹が後退しつつある。


刈安峠から振り返る

この辺りの代表的な植生、いわゆるブナ、スズタケ帯となりつつある。
 一旦下った後短いが笹の中急登し大光山、左に行き、西峰になる。頂上は右だが景色はない。
この大光山西峰は短い笹の中、白樺を点在させ、南アルプス南部、白根南嶺の笊ヶ岳、安倍川源流の山々が一望できる。


笊ヶ岳

遅くなった昼食を摂って下りにかかる。

大光山から草木分岐
 頂上から笹の切り開きの中を急激に下る。
雑木林に入り下ってゆくと、桧の植林になり傾斜が緩み苔の目立つ径となる。
その桧が大きくなると左に下り始め、植林帯をジグザグに下る。
足元が細かい砂利のようで登りにくそう、途中にヘルメットを道標代わりした所、壊れた小屋がある。
見通しの効かない、薄暗い中を30分も下ると、水音が近づき立派な小屋の脇に出る。
水場の小屋の標識がありその名の通りに、沢から水が引いて来てある。
 沢は、関の沢の源流で比較的に穏やか、但し、左上流は、大きなガレ、右下は関の沢の核心部となり険しいはずだ。
径は右を、水平に尾根の南側を捲いてゆく、左、刈安峠方面は、小屋から見えないがガレが発達し通行不能となっている。
杉林の中の捲き径はやがて広くなり且っての木馬道を思わせる算木の残骸が有ったりする。
左側の沢は徐々に離れて行き急激に下ってゆくのが判る、やがて前方が明るくなり峠状の草木分岐となる、標識がある。
 右手に草木への径が、明るい雑木林を下っている、ここまで径はよく手入れされ歩き易い。
草木方面は、時間も短く径もしっかりしていると思われる。
 今日は、車が関の沢であり、東峰への径の状態を確認したいのでそちらに入ることにする。
一般的には、右に草木へ下ることになる。東峰にはそれなりの覚悟をして下って欲しい。

草木分岐から東峰
 左、東峰方面には古い道標があり、径は薄暗い杉林の中を水平に延びているが全く歩かれていない感じだ。
ここからが今回のハイライト、杉林を抜けると笹が大きくなり行く先を隠している。
足元の踏み跡はしっかりしているので径を外れて迷う心配はないが、状態が悪い。
 水のない沢の源頭で径が抜けている場所が2ヶ所ある。
最初のは、短く、一旦沢の中に下り対岸に上り返す、先を見ていると判る。
次のは、大きく欠けているがロープが張ってある、しっかりしているのでこれを頼りに横断する。
何時の間にか右手の杉林が近くなり細い尾根に出る、左手が透けて十枚山が見える。
 透けた左にガレが迫り、尾根につけられた径が侵食され無くなっている。
ここには、注意を促すトラロープが張ってある、登る場合も判るように、下に同じように張ってあった。
なお、このガレは、十枚山山頂からも確認できる。
左は危険なので尾根から少し下、笹と立ち木の中を強引に下り突破する、笹が薄く傾斜もあまり無いので助かった。
これを抜けると尾根が細くなるが危険は無くなり、左手に十枚山が見え、ほっとできる。
 前方に一本杉山の黒い影が迫る、一旦尾根を右に捲くいて峠状になる。
また、杉の林に突っ込む、径は、一本杉山は通らず左を殆ど水平に捲いて行く。
と、少し明るくなり尾根に出て一本杉山分岐になる。標識がある。
ここで3時30分、なんとか明るいうち(5時)に車に戻れそうだ、一安心、だが出来なかった。
よく手入れされた道になり、杉林を下ってゆくと右手に人家、戸持の集落が見えてくる。
径はもう一度南に向きを変え東峰目指して下る、やがて下に人家が見え、ネットに突き当たる。
作業小屋、モノレールがあり、これを下るとコンクリートの階段で林道の終点に降りる。

東峰から関の沢分岐
 林道を適当にショートカットし、下の集落に着く、週4日はここに居るというご主人は、この辺は猿が多いと言っていた。
ほぼ水平に切られた歩道を電柱沿いに行く、一度林が切れ左手に大きく十枚山が圧し掛かる。
山腹が夕日を浴びて紅葉が燃えている。最後の休憩を取る今日のフィナーレにふさわしい光景を暫し堪能。
 暫らく行くともう一軒の人家がある、少し登って尾根に出て、林になる、足元の苔が美しい、途中右に径を分ける。
抜けると点在する茶畑、これをを縫って下ってゆく。
モノレールがあり下からも来ているようだ、高みを選んで下り林に突き当たる、尾根の林になるがここで径を失う。
後は、もう適当に下るだけ一度モノレールに当たりそれに沿って下るとまた茶畑に出た、ここでまた道が無くなる。
植林地を落ちるように下ると関の沢沿いの林道に出た、牛舎の横を通って出発点に戻る。
 十枚山、大光山、草木分岐までは、一般路、草木分岐からが本当の山歩き。
天候も申し分なく、先の前黒法師岳を補ってくれた。

    3.参考タイム
藤枝(5:45)==静岡==関の沢分岐(7:35)--中の段(8:15)--直登コース分岐(8:50)--
1本目の沢(9:00)--2本目の沢(9:35)--3本目の沢(9:55)--十枚峠(10:30)--十枚山(11:10-11:25)
--刈安峠(12:35-12:45)--大光山(13:30-13:50)--水場の小屋(14:30)--草木分岐(14:45)--
一本杉山分岐(15:30)--東峰(16:00)--関の沢分岐(17:05)==静岡==焼津==藤枝(19:00)

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